社内のことは多くは書けないので、部署の雰囲気やチームでのやりとりについて、書ける範囲で書いてみる。お約束っぽくなってしまうが、これはあくまで個人としての経験・意見を書いたもので、会社の意見や思想を代表するようなものではないことに留意いただきたい。また、構造化した文章を書くつもりはないのでMarkdownは使わずにだらだら書いていく。
多くの人が中身や実態について知りたがっている一方で、ちょっとボロを出すとすぐブコメとかでネガキャンしてくる勢力がいて面倒なので書くか大いに迷ったのだが、純粋にその中身にポジティブな方向で興味がある人や、あるいは入社のハードルを少しでも下げたいといった気持ちで実験的に記事を書く。よって、書かないことは書かないし、それ以上追記をするつもりも特にない。ソーシャルのDMでも質問は基本的に受け付けていないので、どうしても知りたい人はカンファレンスなどで自分を捕まえて話しかけるのが確実だと思う。
自分のチームは(記事を執筆している現在においては)完全に国内で一人だけで、他のメンバーやマネージャーは主に米国を主体とした地理的に分散した位置にいる。そのため、7月に入社してから数ヶ月間はオンボーディングやオリエンテーションなどを含め全てがオンラインかつ1人の環境で行われた。チームの存在意義や自分のミッションとして、一人の独立したIndividual Contributorであることが求められるため、これまで所属していた会社ではチームとしての動き方を教えてくれるメンターのような存在がいたのが、今回からは基本的には見て学ぶような体制になった。すべてのシニア職がそうだとは思わないが、基本的には働きはじめの時点で自分の立ち位置やポジションを理解しておく必要があったし、特に地域的に1人目の採用だったので、Big Techと言えど入社後のフローが分からず困ったシーンは結構あった。例えばデバイスの支給や本国と日本法人との基本的な福利厚生などの制度の違いに関してはマネージャーも手探りの状態だったので、今後の改善アイデアとしては次に採用するフェーズにおいては自分がある程度引き受けるなどしたほうが、スムーズにオンボードが進められそうだなという感想を抱いた(読者には言うまでもないと思うが良し悪しの話ではなく役割分担の話である)。
このようなやりとりをフルリモートで行う中で、(自分以外全員に対する)タイムゾーンの違いや、あるいは仕事を新規に開拓していくといったこれまでに経験したことのない様々な非技術的な障壁を体感した。所属するサービスユニットはOSSを大いに使う組織に属しており、時には別のチームのSWEとの連携も大いに必要な領域である。そのため、自分のJob roleでは単なるエンジニアリング能力にとどまらず、コミュニティやチームを跨いだコミュニケーション能力や、技術的妥当性を大小様々な視点で見られる能力が重要で、自分のこれまでのキャリア(なんかForkwellとかLinkedInとかを参照したら色々書いてあると思う)をフル回転で活用する必要があることが、入社して数ヶ月経ってようやく判明したところだ。
求められる働き方にフィットした働き方を模索する一方で、COVIDの影響もあり読者の周りでもそういうケースが多いと思うが、出社する人間・日数ともに相対的に激減し、縦横のつながりを作る機会が減ってしまった。オンラインで新しいつながりを作るのはかなり難しく、結果として、入社してしばらくはマネージャーにおんぶにだっこな数ヶ月を送ったのが実情である。これに関しては自分は正直しょうがないと思っていて、一般に、現実的に中途で入った人間が急に組織に割り込んであーだこーだ言うのは無理だし、まずどこから話しかけたらいいのかだって、規模が大きければ心理的な障壁が高くなるのは想像に難くはないだろう。まあそんなところで、最初の数ヶ月はマネージャーのお墨付きで、「It takes time」な時間を過ごした。この働き方に窮屈さ(あるいは圧迫感?)を感じたり、不自由さを感じる人は、ひょっとしたら大企業は向いてないかもしれない。別にBig Techに限った話ではなく、物事がなかなか進まない時間があったり、あるいは文化を受け入れたり慣れたりするのに時間がかかるのは、自分は分かった状態で入ったのでそこまで苦には感じなかった。ただし、数ヶ月大きく進められるものがないと、いくら割り切っていたとしても自分の価値に疑問を感じることは何度かあったのが正直なところだ。
その気持ちが大きく変わったなと思うのはKubeCon NAついでに計画したUS出張からである。今回のKubeConは日本からの参加者も予想よりはるかに多く、逆に中国はコロナによる渡航規制がかなり厳しいためか現地の参加費率が目に見えて低かったように思う(在米中国人やChinese Americanと思しき人しか見かけなかったので違和感がすごかった)。 うちの社にはCNCF関連のOSSメンテナや現地でのセッションスピーカーがそれなりに在籍しているのもあって、全体での参加人数が思ったよりは多かった。社員同士の食事会も比較的毎日のように誰かがやっていて、行ける人が行ける時に参加する感じでやっていた。前回の海外渡航は2019年のKubeCon San Diegoだったので、およそ3年ぶりの海外出張ということもあって(当時はZOZOにいた)、ここ数年で新しく知り合ったコミュニティのメンバーや、昔から知っている懐かしい顔、それから7月から新たに同僚になった人たちとセッションそっちのけで会話しまくるムーブを決めた。この話をするとわりと不思議がられるのだが、カンファレンスのイベント参加の本質はコミュニケーションだと自分は思っていて、Face-to-faceで会話する機会が数年に1回しかないような人間と話すことが、後でアーカイブが見られるセッションよりも重要であることは、自分にとっては明明白白だ。
今回のKubeCon開催地はデトロイトで、その街の歴史もあってか自動車関連の出展もちらほら見られた。キーノートでも自動運転関連でブイブイ言わせてる(?)Cruise社が講演していたし、わざわざデトロイトを選んだ意味が何かあったのだろう。来年はアムステルダムとシカゴらしいが、個人的にはデトロイトよりはシカゴのほうが先だろうと思ったくらいだ。シカゴには自分が好きなブルワリーがあるので、来年はスピーカーとして参加できたらいいなと思う。
ここまで長々とteam structureや出張のきっかけについて書いてきたが、正直ここまではおまけというか、外資で国内1人で働いてる現状がありますよみたいな共有をしたところだ。自分のここまでの数ヶ月に関しては、正直言って仕事としてはなにもやれていないに等しいし(さっきも書いた通り、マネージャーと織り込み済みの状態)、分かりきっていたとはいえ不安もあった。特に昨今レイオフや採用規模の縮小が米国の各社でも起きているのは報道にもある通りで、自分のパフォーマンスが入社直後から出ていないことに対する会社としての期待に自分がどれだけ応えられているかというのは不安感を煽る大きなポイントだ。
KubeConで米国内外様々な地域からメンバーが集まったのもあって、特に国外在籍メンバーを中心に、ついでに本社に行く予定をみんなで合わせて作ることにした。国外については多くがUKメンバーだったが、それに混ざって自分も一緒にSouth bayに二週間ほど滞在することにした。
結論から言うと、この出張はマジで大正解大当たりジャックポットの結果となった。オンサイトでサービスのあり方について議論したり、水面下で起きてる新機能の実装やそれに付随したさまざまな追加機能の検討やフィードバックなどが、タイムゾーンと物理的な障壁が存在せず文字通りシームレスに進むわけで、そんなの効率爆速になるに決まっている。あとチームメンバーはもちろん、それ以外に周辺チームの数人とめっちゃ仲良くなって一緒にサンフランシスコに遊びに行ったりして最高だった。正直この段落だけを書くためにこの記事を書いたまである。
もうちょっと真面目に書くと、これまでずっとオンラインで孤島のように働いていたところが、実際にそのような現場を目の当たりにし、議論に参加し、Speak upできたという体験こそが自分の自信になったと思っている。誰がどういう気持ちで何をしたいのかみたいなのを文字だけで理解するのは自分には難しいし、オンライン特有の「あ、すみませんお先に話してください(Sorry, you go ahead)」という譲り合いもない。あれマジで本当に1日10000000000回くらいやるやりとりなので無駄だなとずっと思っている。オンラインだと回線品質やラグの影響で聞き取りにも影響が出るが、オンサイトだと本当に会話が楽だ。
これは身内Slackでぶん投げた文章の一部だが、当時の自分の気持ちを表している。
自分のチームは本当にみんな優秀で、息を吸うようにOSSのメンテナがいたりシニア職が大前提のチームなのもあるので、なんの脚色もなく自分が最も経験が浅いメンバーと自信を持って言える。なのでアメリカで滞在するまでは毎日虚無の気持ちを持って生活していたが、実際にミーティングで会話をねじ込んだり、メンバーと直接対話することで「あ、自分にもちゃんと正面から戦える領域があるな」という自信がついたのは非常にいいことだった。この自信だけでしばらくは頑張れそうだが1年は続くかわからないので、次のKubeCon EUでまたエネルギーを補給しにいくと思う。
自立したチームで働くの死ぬほど便利なんだが、なんと困ったことに自分が無能すぎるという錯覚に陥りやすいのでそこら辺の期待値調整が大変
— inductor / Kohei Ota in California (@_inductor_) November 10, 2022
余談だが、飯はやっぱり日本のほうが合っているなと思った。でかい量の飯が多すぎて、half size half priceのメニューが欲しいなと思いましたまる。今週末までアメリカにいるので、適度にだらだらしつつきっちり締めて帰ってこようと思う。ツイッターにも続きの気持ちは色々書いてる気がするので、気が向いたら見てどうぞ。
というわけで、久しぶりのブログはおしまい。